Haruka Furusaka | ふるさかはるか

空中山荘の庭 2026_清明

  • 04.09.2026

青森の雪は、大阪に帰っている2週間の間にあっという間に溶けてしまった。今年の雪はあまりにつらかった。毎日迫り来る雪に心も腕も折れ、その雪の圧迫感がいまだに心身に染み付いていて、引き潮のように雪が消えたことに唖然としながら、庭に出て白鳥の群れが去っていくのをぽかんと見上げている。しかし目の前から去った雪は無くなったのではない。必ずまた現れることを、白鳥もこの腕も覚えている。「私を忘れるな」と雪女のように言い残して冬は去り、春は秋と約束した通り、小さな芽吹きの音と共に地中からむくむくと湧き上がってくる。

畝越しにチュンがいる。畝に隠れて種を啄んではぴょこっと頭を上げてこちらを確認する。今年も藍のシーズンが始まった。

例年通り育苗トレーに種蒔きをし、晩秋に整理しきれなかった藍の畝を片づけていると、だらりと垂れ果てた株の、穂に貼りついた種から、一足先にたくさん芽が吹いているのを見つけた。2月にはこの畑に3メートルもの雪が積もっていたけれど、その雪の下では小さな種の姿になった無数の植物の命が殻に守られ、押し潰されずに蓄えられていた。いつか芽吹く日のために、小さく殻に閉じこもることは必要な身振りだとでもいうように。チュンたちは一粒ずつ種に挨拶するかように一生懸命啄んでいる。雪に耐えた種とチュンと私、春の畑で生き延びたことを互いに確認し合う。